当院から週3回、出羽島診療所という離島の診療所に出向き、診療をおこなっています。この診療所には常勤の医師はいませんが、島の唯一の診療機関であり、島にとって大切な存在です。当プログラムの医師は毎週もしくは隔週に1回、診療所で診療をおこない、離島医療を学んでもらいます。まわりが海で囲まれた、医師もいない、救急車もない(というか島に自動車は一台もありません)、救急搬送は島の人々の漁船で運ぶか、ドクターヘリかという環境で、自分なりの課題をみつけ、一緒に勉強し、成長してもらいます。徳島新聞の記事をのせておきます。状況がきれいにかけているのでまた読んでください。たまに季節毎も写真をのっけますので、四季折々の離島の風景を楽しんでください。


8時20分海部病院近くの牟岐港より出発です。

診療所に着きました。

診療所にあるものは聴診器、血圧計、パルスオキシメーターのみです。あと医師、看護師のやる気でしょうか。

小外科や関節注射用の器財はあります。

レントゲン、心電図はなく、また点滴もありません。

ないことは問題なのですが、ないため病院の外来より病歴聴取、身体診察に時間をかけているのがわかります。

私の総合診療医の能力が上がっていくのがわかり、それはそれでいいのかもしれません。


下の写真で電子カルテみたいなものがありますが、もちろん当診療所は紙カルテです。

基幹病院の海部病院の電子カルテがつながっています。そこで診療所から海部病院への予約をとったり、検査のオーダーができます。ITも僻地医療とって重要なツールとなるのは皆さんご存じの通りです。

空き時間では出羽島の町並みを散歩するのも、うれしい時間です。

島民の方々とのふれあいも、私の地域医療へも大きなモチベーションとなります。

元気な姿をみていると、このままずっと元気でいて欲しいという思いがわいてきます。そのため私に何ができるのだろうかと考え、行動すること、それが地域医療ではないでしょうか。




下の写真はフェイスブックから出羽島さんのです。とてもきれいな写真が多く出羽島の自然の美しさがわかります。


島の診療所 (徳島新聞より)

医療提供、一手に担う  


 連絡船を降りると、真っ赤に咲いたハイビスカスの花に出迎えられた。牟岐町の離島・出羽島は、十二月でも亜熱帯植物が生い茂る島だ。約〇・五平方キロの面積に、百三十二人が暮らす。県内唯一の「県立診療所」出羽島診療所は、港の近くにあった。

 常勤医ゼロ

 「どうで、だいぶようなったで。ちょっと血圧を測りましょうか」。途切れることなくお年寄りが訪れる診療所に、県立中央病院地域医療センター医長・鎌村好孝さん(45)=徳島市伊賀町三=の大きな声が響く。島の高齢化率は68%。島民の地域医療を一手に担う診療所は、どこか高齢者サロンのような雰囲気も漂う。

 二十五年前、診療所に住んでいた台湾人医師が退職して以来、島には常勤医がいない。今では鎌村さんや県立海部病院などの医師が、交代で週に三日間、島に渡って診察する。患者は一日平均二十人。そのほとんどが生活習慣病や関節痛などの慢性疾患だ。

 出羽島港と牟岐港は連絡船で約十五分だが、船は一、二時間おきに一日六往復しかない。「年寄りが牟岐の病院まで行くのは一苦労。島民みんなが本当に診療所を頼りにしている」と診察に訪れた漁師川島津儀さん(74)。「不便なことも多いが、生まれ育った島を離れることはできない。もし診療所が無くなれば、私たちは死ねと言われるようなものだ」

 徳島県内の人口十万人当たりの従事医師数は二百六十二人で、東京都に次いで全国第二位。しかし、その七割以上が徳島市や板野郡など県東部に集中しており、地域偏在が著しい。

 加えて二〇〇四年度からの新医師臨床研修制度の影響で、多くの症例が経験でき、指導体制の整った都市部の大病院へと若手医師が流出。県内は郡部を中心に深刻な医師不足に陥ってしまった。

 県は昨年八月、医学生に地域医療の意義や重要性を知ってもらおうと、那賀町内の病院や診療所で「夏季地域医療研修」を実施。全国から二十四人が参加し、山間部の診療所を見学したり訪問診療に同行するなどした。

 「医師と患者の信頼関係が厚く、家族のような雰囲気だった。医師が地域に解け込んでいるように感じた」。現場に触れた徳島大医学部四年の坂東美佳さん(23)=徳島市南前川町二=はこう振り返り、「すごくやりがいがありそう。これから進むべき道はまだ決めていませんが、地域医療という選択肢が新たに加わった」と話した。

 世間話に花

 出羽島診療所で午前の診療に一息ついた鎌村さんは、白衣を着たまま自転車に飛び乗り、訪問診療へ。腰痛で歩くことが難しい患者の家へ出向いて容体を確認した後、患者や家族とともに世間話に花を咲かせた。

 「この診療所がなければ病気を我慢し、症状を悪化させてしまう島民もいるだろう。診療所は島民の『かかりつけ医』のようなもの」と再び自転車にまたがった鎌村さん。「離島という厳しい環境の中で、どこまでの医療を提供できるか分からない。でも保健、福祉との連携を深めれば、島民の健康を十分に守ることができる」と力強くペダルをこぎ始めた。

 交通の便が悪い上に過疎、高齢化が急速に進む離島や山間へき地では、たった一人の医師の存在が何事にも代えられない安心感を住民に与える。だが、そのたった一人の医師の確保もままならない医師不足の現実。地域医療の現場は今、かつてない正念場を迎えている。