毎週水曜日もしくは木曜日(バドミントンとかぶらない曜日)で1時間程度、総合診療レクチャーをしています。お題はそのとき勉強したい、もしくはもっと知りたいものを好きに選んでください。ぼくの基本的な考えは「勉強は知りたい時にするのが一番効率がいい」です。だから一所懸命臨床をして、患者さんのことで悩み、いろいろな疑問点をぼくに聞いてください。それではお題を下に乗せておきます。
肺炎は日常診療で最も多く遭遇する疾患だ。呼吸器症状を主訴とする患者さんで肺炎を疑うのは簡単だがどの抗生剤を使ったらいいのか迷うことが多いと思われる。肺炎はcommon diseaseであり、初期対応する研修医が適切にアプローチし、抗菌薬を選択することができれば、肺炎診療が楽しくなり、上級医の信頼もあがり、また感染症に対してのストレスが減ると思われる。このレクチャーは肺炎診療を感染症の基礎から学び、レベルアップするためのものである。
詳細
① 抗菌薬に対しての考え方や、覚え方を学ぶ
② Common Diseaseである肺炎を実際に一緒に体得する
③ 感染症診療の基本的な流れを理解する
④ 懐かしの国試を思い出して臨床に応用する
⑤ 定型・非定型肺炎を区別する
⑥ 肺炎を診断するに当たってのコツを体得する
⑦ 肺炎の患者さんを重症度分類して適切に治療をする
⑧ 臨床的にどのように抗菌薬を使用すればいいか理解する
⑨ レジオネラ肺炎に気をつけることができる
⑩ さまざまな呼吸器感染症の迅速キットの利用の仕方を理解する
①抗菌薬の一つ一つをどのように考えればいいのか、また抗菌薬の教科書をどのように読めばいいのか学ぶ。②肺炎の基本的な流れを勉強する。どのように診断し、患者さんの重症度を把握し、治療・抗菌薬を選択し、治療効果を判定するか学ぶ。④国試の問題を解きながら、懐かしみつつ臨床にどのように直結しているかを振り返る。⑤定型肺炎、非定型肺炎はどのように鑑別するのか、どのような点に気をつけて治療をするかポイントを学ぶ。⑥肺炎の原因菌について、また昨今増えている耐性菌について勉強する。⑦CURB-65、A-DROP、I-ROADなどのスコアリングを使用して患者さんの重症度、見ていくポイントを勉強する。⑧CTRX、CAM、SBT/ABPC、CPFX、PAPM/BP、ABPC、PCG、CLDMの代表的な抗菌薬を勉強し、肺炎治療に使用する抗生剤を勉強する。
⑨重症化しやすい高齢者のレジオネラ肺炎について注意点を学ぶ。⑩外来で使用できる迅速キットはインフルエンザ、マイコプラズマ、肺炎球菌、レジオネラがあるが、それぞれのキットの特徴を勉強して臨床にすぐに使えるようにする。
感染症診療の基本的な考えから、肺炎診療の基本を学ぶことができる講義である。
スライド枚数 54枚 時間は約1時間程度
漢方は知りたいと思いながら、日々忙殺されている毎日の中で勉強ができる機会が少ない分野だろう。私は総合診療医として患者さんのどのような問題にも向かい合っていきたいしそのスキルをこれからも身につけていく。総合診療医として働いているとどうしても患者さんのことで悩む疾患は、病名のつけることのできない疾患である。食欲がないと言われても、腫瘍でなくて、ホルモン異常でなくて、胃腸疾患でもなくて、生活習慣でもなくてって鑑別を挙げながら進んでも、検査検査の果てにすることが何もなくなってしまうことが臨床をしていて多いと思う。その患者さんに対峙するときは医師として良くしてあげるものがないため、ストレスになってしまうことがある。そのときに漢方をうまく使うことができたら、患者さんの症状を和らげてあげるだけでなく、患者さんと寄り添っていけるため、患者さんの満足度も高い。老年症候群と言われる病名がつかない、また治療をすることができない、いわゆる「年のせい」と言われる症状にどうやってアプローチしていくか、この講義で学ぶ。また、高齢者に対しての漢方の考えを学ぶ。
詳細
① 高齢者に対しての漢方の考えを学ぶ。
② 高齢者の病気の特徴を知る。
③ 三焦弁証より加齢現象に対する処方を学ぶ。
④ 腎虚の処方を学ぶ。
⑤ 漢方における腹部診察を学ぶ。
⑥ 虚実、陰陽、燥潤について学ぶ。
⑦ 高齢者の皮膚掻痒症について。
⑧ 東洋医学と相性のいい消化管の疾患について学ぶ。
⑨ 食欲不振の高齢者について。
⑩ 便秘について。
⑪ 下痢について。
①高齢者の病気の特徴を知る。高齢者は生体反応の個人差が大きく、加齢によって増大する。また免疫機能が低下しており、同時に多くの病気にかかる等、②高齢者の病気の特徴を知る。③三焦弁証より加齢現象に対する処方を学ぶ。上焦、中焦、下焦から加齢現象に対する処方を学ぶ。今回の講義は主に④腎虚の処方を学ぶ。心下痞硬、胃内停水、腹皮拘急、小腹不仁、胸脇苦満、正中芯、臍傍圧痛といった⑤漢方における腹部診察を学ぶ。加齢現象である体質の変化、⑥虚実、陰陽、燥潤について学ぶ。高齢者は肌が乾燥しかゆみがある人が多い。そのため⑦高齢者の皮膚掻痒症について勉強する。大建中湯をメインにして消化器系の疾患に対する漢方薬は見直されつつある。六君子湯など聞いたことがある漢方も増えてきているだろう。今回は⑧東洋医学と相性のいい消化管の疾患について学ぶ。食欲がない高齢者は多い。ドグマチール?でもパ-キンソン症状が出たら嫌だし、抗うつ薬?出しづらいし、患者さん怒るかもしれないしなといった、どうしたらいいのかわからない症状の一つだろう。そのため⑨食欲不振の高齢者について勉強する。Common diseaseである⑩便秘について、プルゼニド、マグミット、ラキソベロン以外にどのような治療をしたらいいのか学ぶ。特にマグミットにより腎機能が悪く高Mg血症のリスクが高い患者さんには役立つだろう。また同じくCommon diseaseである⑪下痢について、過敏性腸症候群も含めて漢方からのアプローチを学ぶ。
老年症候群に対しての漢方の使い方を学ぶことで治療の幅を広げることのできる講義である。
総スライド枚数 44枚、所要時間 50分程度
研修医として救急診療にあたる際、びっくりするのが、心肺停止の患者さん、もしくはnear CPAの患者さんに出会った時だろう。私が県立中央病院で初期臨床研修医だったとき、心肺停止の患者さんがきて、お地蔵さんのように動けなかったため、「おまえが動かんと患者どうするんだ。」っていう指導医の怒号と膝蹴りによって、前に飛び出したことを覚えている。「勢いよく飛び出しても地蔵は地蔵」って一句詠んでいた。今はそんな熱い愛情あふれる指導はしないだろうが、振り返ってみるとそのときの心の傷が、私を医師としてぐんと成長させてくれたのだと思う。それ以来、わからないことがあれば、勉強して臨床にフィードバックをする癖がついたような気がする。BLS、ACLSは私の医師としての基本であり、始まりでもある。医師になってまず思ったのが、目の前で自分の大切な家族が倒れたとき、機内でお医者さんいませんかと言われたとき、手をあげ何かできる医師になりたいということだ。BLS、ACLSが苦手な人がいたら、この講義でまず臨床で動けるようになるくらいまでは成長できるだろう。地蔵よ、動け!
詳細
① 心肺蘇生の歴史について
② 国際ガイドラインの移り変わり
③ BLSのデモンストレーション
④ BLSのビデオを供覧
⑤ AHAガイドライン2010の主な変更点
⑥ BLSのプロトコールの確認
⑦ ウツタイン大阪プロジェクトの紹介
⑧ さまざまな救急コースの紹介
⑨ ACLSのビデオを供覧
⑩ ACLSの座学
⑪ 難治性VfやPEAの対応
1990年代以前の医療においては心肺停止に対応することは非常に困難であり、病院外で起こったら絶望的であるというのが従来の通念であった。1990年にノルウェイのスタバンガー近郊の史跡ウツタインで開催されたウツタイン会議から①心肺蘇生の歴史がパラダイムシフトすることになる。それ以後5年ごとに②国際ガイドラインが改訂され、その概要をちらみする。歴史を学んだところで最新の③BLSのデモンストレーションをみてもらう。もちろんしてもらってもいいが、指導医の前で自信を持ってできる人にはこの講義は必要ないと思う。その後、④BLSのビデオを一緒にみる。2015年にはまた改訂されるが、⑤AHAガイドライン2010の主な変更点を勉強する。⑥BLSをプロトコールの確認。日本が世界に影響をあたえた研究である⑦ウツタイン大阪プロジェクトを見てもらい論文、研究のおもしろさを感じてもらう。Off the job trainingは実地臨床では非常に大切であり、⑧救急のさまざまなコースを知ってもらい、時間のあるときにはそれらのコースに参加すればさらに大きな力になると思われる。県内県外にこんなに優秀で熱い人達がいるのかとエネルギーを与えてくれるだろう。⑨ACLSのビデオを一緒にみて、⑩座学で薬剤や器材を用いる心肺蘇生を学んでもらう。⑪ちょっとマニアックな難治性Vf、TCA中毒、マグネシウムの使い方など勉強する。
救急室で心肺停止の患者さんが来たときに動けない人はこの講義を受けてみよう。
スライド枚数 65枚、所要時間1時間20分
「先生、点滴何にしますか」研修医のときは看護師さんがいじめていると思っていた。正解がわからないし、上級医がくるまで数分なのだから、その指示を待ちたくて、「うーん、何にしようかな、何でもいいよ。」と答えると、冷たい表情でぼくをにらんでいたもんだ。何か答えないといけないから、一番安い生食(後で変更するときに気が楽)、ゆっくり落としていてください(いきなり急速滴下してしまうと間違っているとき取り返しがつかない)という理由で生食ゆっくりがぼくの合い言葉になっていた。吉野屋での牛丼つゆだくでと同じくらい決まり文句だった。みんなも同じような体験があるだろうし、現在進行形かもしれない。だからこの講義ではその状態から脱却し、自信をもって、「生食500mlをつないで1時間で落としてください。それで血圧の反応をみます。」ぐらいまでいけるだろう。今から考えると「生食ゆっくり」では何をしたいのかわからない処方だよね。気力と時間があれば海部病院で看護師さん向けに話している動脈血ガスのみかたもおまけで講義させてもらう。動脈血ガスは簡便で患者さんの状態把握にはとても有用な検査だが、少し複雑。動脈血ガスをとって上級医に報告するときに、○○性○○―シスです。どうしましょう?くらいには成長できるように講義したい。
詳細
① 輸液のキソのキソから学ぶ。
② 輸液の目的
③ 輸液内容
④ 補充場所
⑤ 水・Naバランスの病態生理
⑥ 生食、5%ブドウ糖、ソリタT1、ラシックス、サムスカで体内の反応を知る
⑦ 輸液量
⑧ 低Na血症をみたら
⑨ 喪失体液量について
⑩ 体液貯留時の病態生理
⑪ 腎臓の生理学
⑫ 動脈血ガスのみかた
①輸液の基礎はWhy?What?Where?How much?の4つ柱から成り立つ。この講義ではそれぞれポイントをしぼって解説する。②輸液の目的はずばり水と電解質を補うことである。して③その輸液内容については生食、ヴィーンF、ヴィーンD、ソリタT1、ソルデム3A、5%ブドウ糖液とさまざまにあるが、それぞれについて勉強する。また、それぞれの輸液が④補う場所を理解するために、昔学んだ忘却のかなたの体液量、細胞内液、細胞外液の関係について学ぶ。それぞれの輸液がどのコンパートメントに補充されるのか勉強し、この講義のキモである⑤水・Naバランスの病態生理を勉強する。水・Naバランスの病態生理から、⑥それぞれの輸液、また利尿薬がどう水分と塩を動かしているのか勉強する。それをどれだけ必要なのか⑦輸液量を決める。体の水分変化の評価をする際、尿比重やFENaを考慮し、尿のNaが大切であることを理解してもらうため、⑧低Na血症のアプローチを勉強する。⑨喪失体液維持量を評価するのも輸液の必要量を求める上では重要である。⑩体液貯留時はどのようなホルモンが働き、どう体が反応するのか、⑪腎臓の生理学も含め勉強する。おまけではあるのだが海部病院で看護師さん向けに話をしている⑫動脈血ガスのみかたを講義する。
外来で看護師さんに自信をもって何をつなぐのか言えない人にはおすすめである。
スライド枚数 73枚、所要時間1時間程度
これも県立中央病院での研修医のときの話だ。よほど印象深く、また自分がよほどダメだったのだろう。ICUに入っていた患者さんのことで深夜3時に電話で呼び出された。「先生、モニターが変なんです。」ICUの看護師さんがわからないのであれば、ぼくにはわかるはずもない。モニターとにらめっこすること2時間、不眠の時に羊の数を数えるがごとく、期外収縮の数を数えていた。いまから考えると何のおまじないだったのだろうか。じーっとモニターをみている間は、急変しないという願掛けをしていたようだ。朝6時にこの時間ならいいだろうとようやく上級医に連絡、様子をみておいてで終わった。朝日がまぶしかったのは、寝ていないためか、眼に光るものがあったからか。後日、違う患者さんだが、午後9時ごろ、看護師さんから連絡あり。「先生、モニターが変なんです。」またモニターを見続けようとした矢先に、看護師さんより。「先生、見ててもどうせわからないんでしょ。早く○○先生に電話してよ。」手足が冷たくなり、瞬間で怒りが満ちあふれてくるのがわかった。あまりにも腹が立つと、顔はにやにやするようで、気持ち悪い笑みを浮かべながら、○○先生に電話した日を覚えている。そのときはモニター心電図に答えがあると思っていたようだ。この心電図ならこうしないといけないという観念があったため、間違ったら怖い(だって心臓だもんね)と思っていた。ただ心電図は患者さんの状態を表す、有用な機械であって、大切なのは患者さんが良くなるか、悪くなるかを判断することなんだと気づくのは、あと4年先の話だ。モニター心電図はありふれた患者さんの状態を表す、素晴らしいモニターであるため、この機械が何をいいたいのか、この講義で読み解いてもらう。
詳細
① 心電図への苦手意識について
② 心電図を見たとき、もっとSimpleに考えよう
③ リザーバーorポンプどっちが大事?
④ モニター心電図をみて何が大切なのか
⑤ 遅すぎる心電図
⑥ P波のあるなしで判断
⑦ 房室ブロックVS 洞不全症候群
⑧ 心拍数が早かったら
⑨ ポンプに関係のあるなしの判断
⑩ 不整脈を名付けよう
⑪ 心房細動について
⑫ Affirm試験とCast試験からみる研究論文のおもしろさ
⑬ 心室細動をみたら
⑭ おすすめの抗不整脈薬
①心電図への苦手意識は研修医だけでなく、ある程度のベテランでもあることが多い。それは上記したように何をモニターが示しているのかわからないため、対処の仕方に迷うからだ。ただ、放置していい不整脈を積極的に治療すること、慌てなければいけない所見を漫然と放置すること、この2点に注意して考えていけばいい。②心電図をよりシンプルに考えるための講義である。シンプルに考えるために、③大切なのはリザーバーなのかポンプなのかをモニターから読み取るのが先決だ。そしてミミタコで聞いていると思われるが、私みたくモニター心電図を見守る人になってはいけない。大切なのは患者さんの様子なのである。このモニター心電図が放置していいのかどうかは④「患者さんの様子」「心拍数」「QRSの幅」3点でみたらすっきりする。⑤遅すぎる心電図のチェックポイントをあげる。⑥P波のあるなしで房室ブロックと洞不全症候群を診断し、⑦その二つの徐脈性不整脈の相違点を学ぶ。⑧心拍数が早いときのポイントをあげる。大切なのは⑨ポンプに関係のあるなしでどうのようにアプローチしていくかである。⑩不整脈の名付けの由来について聞く。⑪今最も注目されている不整脈の心房細動、心房細動をみたときにどのようにアプローチしていくかを学ぶ。不整脈の常識を変えた試験の⑫Affirm試験とCast試験から研究のおもしろさを感じてもらう。ACLSの講義と重複するが⑬心室細動をみたらどうするかを勉強する。⑭今流行のおすすめの抗不整脈薬について勉強する。
モニター心電図を見たくない、見ると動けなくなる人におすすめの講義である。
スライド枚数 97枚 所要時間1時間程度
「おとっつあん、おとっつあん」「おっかさん、おっかさん」ドラマおしんのワンシーンではなく、大学での講義の一コマである。心音心雑音の講義で、おせじにもまじめな学生とは言えなかったぼくだが、テストでいい点をとることができないのはわかっているので出席で稼ごうと授業は一所懸命出ていた。出席点はいいのだが、ほとんど授業は寝ていた。だから夜遅くまで飲み明かし、大学は寝にいくところだった。夢の中で、「おとっつあん、おとっつあん」「おっかさん、おっかさん」という声が聞こえ、大阪に帰ろうかなってノスタルジーを感じていた。「勉強は必要に迫られたときにするのが一番効率がいい」頭の良くないぼくの結論である。大学で勉強させられて、医学の勉強ができなくても試験に落ちるくらいで困っていないので、気合も入らなかったし、能率も悪かったと思う。医師になって、勉強は患者さん達を救う大きな力になることがわかり、今気合を入れて勉強している。研修医は時間がない、ぼくと一緒で研修医になってから、勉強していたらよかったって思うことは多々あると思う。その中で、すべての医療のベースとなる、総合診療の部分をいかに効率よく学んでもらうか考えて、教材を作っている。この講義は救急で重症感がある呼吸困難をみたときの臨床推論と、それを判断するのに有効な武器となる身体所見を学んでもらう。興味がある人はこの講義を受けて欲しい。昔教わった「おとっつあん、おとっつあん」「おっかさん、おっかさん」が臨床でこんなに役に立つのかと、大学の先生方に謝りたくなるかもしれない。
詳細
① 呼吸困難を主訴にきた患者さんへの臨床推論を学ぶ
② Do not miss diagnosis/Likely diagnosisのメインに鑑別疾患を列挙する
③ 疾患別のClinical pearlを学ぶ
④ 見逃したくない急性肺塞栓症について
⑤ 深部静脈血栓症から急性肺塞栓症まで
⑥ 高齢者の心不全について
⑦ 心不全の身体所見について学ぶ
⑧ 僧帽弁閉鎖不全症について
⑨ 大動脈弁狭窄症について
⑩ 大動脈弁閉鎖不全症について
⑪ 肺音の聴診について
徳島には「胸がせこい」というフレーズがある。これほど医師泣かせのフレーズはない。ぼんやりとしたすべてを抱擁する日本語らしい言葉である。①「胸がせこい」患者さんが来たときのどのようにアプローチをしているか 臨床推論を学ぶ。その臨床推論の中で②Do not miss diagnosis/Lileky diagnosisのメインに鑑別疾患を列挙し、個々の疾患について学ぶ。臨床経験の豊富な医師達は患者さんをみて一目で診断するsnap diagnosisができる疾患が多い。もちろん若い医師は外れたときが悲惨なので、あまりsnap diagnosisをしない方がいいのだが、なるべく診断に近づけることができる臨床上大切なポイントを学んでおくのは有用であると思われる。③呼吸困難を呈する疾患達のClinical pearlを学ぶ。総合診療医として遭遇したくない疾患のベスト5位には間違いなく肺血栓塞栓症がはいる。同僚がこの疾患でどえらい目にあっているのを山ほどみている。頭においていないと診断がつかないのである。いつも頭においておけるように④急性肺塞栓症について学んでほしい。それゆえに私は足がむくんでいる患者さんをみるときにドキドキする。普通は足のきれいなスラッとした人をみたらドキドキすると思うのだが、私は足がむくんでいる人をみたらドキドキするのである。⑤足がむくんでいる人にどうアプローチしていくか勉強する。⑥高齢者における心不全はcommonな疾患であるのだが、症状が非典型的でわからないことが多い。どのような症状、所見で来院するのか学ぶ。患者さんの病気を診断するには病歴、身体所見が大きな武器となる。武器もその使い方を知っていないとオブジェになってしまう。武器をしっかり使えるように、⑦心不全の有用な身体所見であるJugular vein pressure、Ⅲ音とⅣ音、Abdominojugular reflux、Valsalva法における血圧の変化を、実際の身体所見のビデオや音を交えて勉強する。学生、研修医のカルテをみていると意識清明、眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄疸なし、頸部頸部リンパ節腫脹なし、甲状腺腫大なし、呼吸音清、心雑音なし、腹部平坦、難、圧痛なし、下腿浮腫なしというのが多い。Am J Med Sci.355(6);444-50,2008では40歳以上の入院患者さん2977名で心雑音は649名聴取されている。やっぱり積極的に聞きにいかないと身体所見の感度は落ちてしまうのである。聞きにいくためには、その雑音について勉強しないといけないんだよね。てなことで高齢者に多い疾患である⑧僧帽弁閉鎖不全症について⑨大動脈弁狭窄症について、⑩大動脈弁閉鎖不全症について、エコー等の画像と実際の音を交えて勉強する。外来で肺音を聞くときに、服をめくってもらうのが時間的につらくなり、服の上から聴診しようかどうか葛藤することがある。どのような聴診器でどれほどの圧をかければ服の上から聴診してもいいのかというおまけのスライドつきで、⑫呼吸音を勉強する。
胸がせこい人に対して、自分の胸がせこくなる人はこの講義を受けて欲しい。
スライド枚数 59枚、所要時間は1時間
愛する人、愛する家族、愛する地域の命を守り、暮らしを守り、幸せを守る
そんな医師になりたい方あなたの力が必要です